本校1号館(旧池田菊苗邸)についてご紹介します。
旧池田菊苗邸「本校1号館のなりたちを振り返る」
本校1号館は、今から94年前の1925年(大正14年)、池田菊苗氏(いけだきくなえ)の住居兼研究室として建築されたものであり、木造住宅がまだ多かった時代、東京郊外に建てられた最新鋭の技術である鉄筋コンクリート造の住宅は、大変人目を引いたことでしょう。第二次世界大戦の戦災を免れて焼けずに現在に至っています。
戦後、三浦学園の所有となりピアノ・声楽・管弦打楽器の個別のレッスン室や小ホールとして使用されています。特に入って右側にある理事特別応接室には、当時を思わせる家具や調度品があり大切に保存されています。本校へ来られた大切なお客様をもてなす時に使用されています。
では、この池田菊苗という人はどのような人だったのでしょうか?
池田菊苗(1864年~1936年)は、東京帝国大学の教授(現東京大学)であり、戦前日本の化学者でした。「吾輩は猫である」で有名な文学者夏目漱石とも仲がよかったそうです。
現在、世界中で広く普及している「うま味」調味料の発見者で、その成分はL-グルタミン酸ナトリウムであることを解明した人です。幼少期より昆布のだしに関心を持ち、湯豆腐のだし汁昆布の研究に着手し、1907年(明治40年)昆布から煮汁をとり、うま味の素であるL-グルタミン酸ナトリウムを得ることに成功。後に「味の素®」という商品名を付けられ、製造販売、味の素株式会社へと発展しました。
人の舌で感じる味覚は、甘味(あまい)・酸味(酸っぱい)・塩味(しょっぱい)・苦味(にがい)の四つだと言われていましたが、第五の「うま味成分」の発見により日本語の「UMAMI(うま味)」のままで世界に通用するまでになりました。「日本の十大発明」のひとつであるとも言われています。
2008年(平成20年)11月には、『「AMBITION-化学者 池田菊苗」"志"(こころざし)』というタイトルで、昆布の"うま味"成分がグルタミン酸であることを発見し、調味料の製造法特許を取得してから「味の素®」という製品を事業化するまでのドキュメンタリードラマが「"うま味"発見百周年」を記念してつくられました。同時に紙芝居も作られ、小さな子どもたちにもこの偉人の功績が伝えられ、生き方を学んでいたようです。
志(こころざし)を高くもち、様々な苦難に立ち向かい、世界に通用する人の生活に役立つ仕事をなし得た池田菊苗の話をしました。本校の歴史の中にはこんなこともあったということを覚えておいてほしいと同時に、皆さん一人ひとりが池田菊苗のように大きな志をもって日々精進し大きな夢の実現を目指してほしいと思います。